「SCS24という素材」
「ロストワックスの素材として気に入っているのがSUS630だったかな、析出硬化系の材料があって意外とロストだと普通の304とそれほど変わらない値段でやれるんだなって思ったんですけど、御社でも同じですか?」
先日、あるお客様の開発担当責任者のかたからいただいたお問い合わせです。
ステンレスロストワックス鋳造というとSCS13、つまりSUS304相当の材質をお使いになるケースが多く見られます。実際に汎用的な素材であり、SUS304はとても馴染みのある素材ですので、使い勝手が良いのは間違いありません。
しかし、他の素材の特徴を知っておくと更に活用範囲が拡がります。今回お話いただいたお客様は本当に金属素材について詳しい方で、鋳物に携わる者として個人的にもとても嬉しく感じた次第です。
※「ステンレス鋳物のプロ」は創業80年の経験から、鋳物技術、ステンレス等素材の特性、そして厨房機器・食品機械メーカー様の業界特徴やニーズを熟知した上であらゆる対策を講じることが可能な「ものづくり設計サポーター」です。
今回お問い合わせをいただいたSUS630相当のステンレス鋳物素材は、SCS24といいます。では、SCS24とはどのような素材でしょうか。
例えば部品の強度を上げたいという場合、どのように対応するでしょうか。一般的には太さを太くするとか、厚くするとか、リブを入れて断面係数を上げるなどの対策があります。しかし、実は素材そのものを変えるという選択肢もあります。今回のテーマであるSCS24は、まさにこの選択肢に合致します。
このSCS24ですが、SCS13との一番の違いは、引張強さです。金属素材の強度を考えるうえで最も一般的なのが引張強度ですが、それがSCS13(SUS304相当)に対し、約倍近くあります。硬さも1.5倍から2倍あります。このため、耐摩耗性にも効果を発揮します。したがって、通常よりも強度が必要な部分や摩耗が激しい部品にはとても有効な素材になります。また、引張強さだけで単純に考えれば、強度が倍になると、太さは半分で済むことになります。つまりスリム化が可能になります。
実際によく使われているのは、シャフト関係やチェーン(鎖)関係の部品です(シャックルなどにも使われています)。力のかかるところにはとても効果を発揮します。
「素材単価は高いんじゃないの」と言われるかもしれませんが・・・実はその通りで、やはりSCS13よりは若干高くなってしまいます。「じゃぁダメだ」と思われるのはやや早計です。同じ強度で細くできるのであれば総重量を減らすことが出来、結果的にコストメリットを出せるかもしれません。そこは用途と形状次第ですね。
勿論デメリットもあります。例えば耐食性はSCS13よりもやや劣ります。また、当社の場合は常に溶かしている素材ではないので、1ロット150kg程度の製品重量が必要になってきます。1個当たりの重量によっては、それなりの数が必要になってきます。もし多くの方から継続的なご注文をいただければこの問題は解消できるのですが・・・(笑)。
もし、SCS13の素材を使っている方で「もう少し強度を上げたい」、「スリム化したい」と思われる方がいらしたら是非、お声がけください。ちなみに現在お使いの型は基本的にそのまま使えます。素材によって型を変更することはありませんので。
モリチュウでは、お客様のニーズに合わせて、素材や製造方法のご提案をしています。調達面での課題、開発面での課題について、お話を聞きながら解決策のご提案をいたします。進めてしまってから後に戻るリスクを避けるためにも、今モヤモヤしていることがあれば、是非以下URLよりお問い合わせください。何か新しいヒントが見つかるかもしれません。
株式会社モリチュウ
代表取締役 森 雄児