ロストワックス鋳造品は2回縮むんです・・・
「鋳物は縮むって時々聞くんですけど、どう言うことですか」とお客様から聞かれることがあります。
ロストワックス鋳造は鋳物の一つです。したがって縮みます。その点について、少し深掘りしてみましょう。
※「ステンレス鋳物のプロ」は創業80年の経験から、鋳物技術、ステンレス等素材の特性、そして厨房機器・食品機械メーカー様の業界特徴やニーズを熟知した上であらゆる対策を講じることが可能な「ものづくり設計サポーター」です。
ご存知の通り、ロストワックス鋳造法には必ずワックスパターンが必要です。そして、パターンは、溶けたワックスを金型に射出注入して作られます(ロストワックス鋳造の生産工程については、以下のURLを参照ください)。
実はこのワックスにも数種類あるのですが、それぞれのワックスについての情報はやや専門的すぎますので別の機会に譲るとして、どのワックスにも共通しているのが
「ワックスは膨張、収縮する」
と言うことです。
一般的に温度が高くなるとワックスの体積は大きくなり、逆に冷却時には、小さくなります。そのため、ワックスパターンの金型を作るときには、ワックスそのものの収縮を考えて作らなくてはいけないと言うことになります。
(と、したり顔で書いていますが、実は私たちもワックスパターンの収縮率を考慮せずに、3Dのワックスパターンを作ってしまい、必要な寸法を確保することができなかったと言う苦い失敗経験があります・・・)。
では、実際にロストワックスの製造工程においてどのくらいの収縮が起こるのでしょうか・・・。
ワックスパターンの一般的な収縮率は0.6から1.2%となります(温度以外にも様々な条件、例えば金型内で射出圧力がかかっている時間なども影響します)。しかし収縮はこれで終わりではありません。
次に、鋳造合金そのものが冷却時に収縮します。つまりチョコレートに凹みがある現象です。この収縮率は、素材及び鋳型の種類によって異なりますが、一般的には1.2から2.0%となります。
したがって、製品全体の収縮率は、
ワックスパターンの収縮 0.6〜1.2%・・・①
鋳物合金の収縮 1.2〜2.0%・・・②
となり、
製品全体の収縮は ①+②=1.8〜3.2%
となります。
これが今回のタイトル「ロストワックス鋳造品は2回縮むんです」の意味です。
例えば、全体の収縮を2.5%で考えた場合、20cmのものを制作する際には20cm×1.025=20.5cmのワックスパターン用 金型を作らないといけないことになります。
あくまでもこれは目安であって、実際には製品の形状等によって、あるいは肉厚によって変わってくるのですが、経験値や試作等によって最終決定をしていく必要が出てきます。
いずれにしてもロストワックス鋳造において、ワックス原型と鋳物の収縮は、熱して溶かして冷却して・・・と言う工程を踏む以上避けられない物理的自然現象です。従って、それとどううまく付き合っていくかが大事です。
鋳物独特の現象をしっかりとお伝えしながら適切なモノづくりのアイデアを提供していく。これがモリチュウそして、「ステンレス鋳物のプロ」の使命です。もし、ステンレス鋳物を様々なシーンで活用したいと考えている方がいらしたら、鋳物の活用方法について熟知しているモリチュウに是非お声がけください。
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