ロストワックス鋳造は薄肉化できるっていうけど、どうしてできるの?ちなみに何ミリ位まで薄肉になるの?
「なるほど、同じようなものでも薄肉にして軽量化が出来るんですね!」
・・・ステンレスロストワックス鋳造のお話をしていた際にお聞きしたひとことです。
防錆効果を出しながら同時に軽量化が実現し扱いが良くなったと、お喜びいただいた時のお声でした。このように共に考えながらお客様の希望を実現できた時は、お客様同様私たちもとても嬉しく感じる瞬間です。
※「ステンレス鋳物のプロ」は創業79年の経験から、鋳物技術、ステンレス等素材の特性、そして厨房機器・食品機械メーカー様の業界特徴やニーズを熟知した上であらゆる対策を講じることが可能な「ものづくり設計サポーター」です。
世の中の流れとして、出来るだけ軽量化したい、普段の扱いに加え運搬時のエネルギーコストを考えても重量は抑えたい・・・と言うのは、開発者の常日頃からの願いです。軽薄短小は通常あまり良いイメージで使われませんが、モノづくりにおいては、重要な視点となります。
さて、軽量化を実現するには薄肉にしなくてはいけませんが、それを実現するには溶けた金属がさらさら流れる状態でなくてはいけません。しかしステンレスと言う素材は溶かした時に決して流動性が高くありません。つまりさらさらではなく、やや粘っこいイメージです。
ではなぜ薄肉にできるのか・・・それは、ロストワックス鋳造の生産工程に秘密があります。
実はロストワックス鋳造は蝋型に特別なセラミックでコーティングし、乾燥した後、セラミックを熱して中の蝋を外に出します(脱漏といいます)。これにより空洞を作ります。
つまり、中が空洞の「セラミックの殻」が出来たということになりますが、その空洞部分が必要とされる製品の形状になっているわけです。
しかしこれだけでは薄肉になれる条件が整っていません。
では、セラミックの大きな特長はなんでしょうか?セラミックは陶磁器の一種です。そして登り窯に代表されるように、陶磁器は焼成してつくられますが、そうです、一番の特長は「セラミックは熱に強い」ということになります。
実はロストワックス鋳造の生産工程のキモの1つは、空洞部分に溶けた金属(溶湯=ようとう)を流す際に、「セラミックの殻を焼成して高温(1000~1100度)に熱する」ことです。
金属は熱を加えると溶けてきますが、当然冷えてくると固まってきます。そしてその途中で段々水あめのように粘り気が多くなってきます。となると出来るだけ冷えないようにすればよいということになります。つまり、冷えていない熱い状態の方がよりスムーズに溶湯が流れることは容易に想像できると思います。
そして、十分に高温に熱したセラミックの殻に溶湯を流し込む・・・ということは、つまり溶けた金属が隅々まで行き渡るということです。
では具体的にはどのくらいの薄さまで対応できるのでしょうか。
これは製品の大きさによって変わりますが、通常私たちは「一般的には4mmまで可能」とお伝えしています。ものによっては3mmまで出来るかもしれません。
通常の鋳鉄は8mm~10mm位が平均かと思いますので、その半分位になるということになります。
鉄とステンレスの素材の価格は大きく異なりますが、同じものでも形状を工夫し、強度を保ちながら薄肉化することで軽量化を図ることが出来る可能性があります。つまり、材料費の違い=価格の違いには必ずしもならないということになります。
実際に鋳鉄製品を防錆の観点からステンレス化をした際に、可能な限り肉を削り落とし軽量化をした上でコストアップを抑制し採用されたケースもあります(お客様の都合で具体的にお話をすることはできませんが・・・)。
薄肉、軽量化に加え、錆びずらいというステンレスの基本的な利点に加え、薄肉、軽量化という特長を併せて考えていただくと、様々なモノづくりのヒントが出てくるかもしれません。今後の部品づくりにメリットがあるかもと感じた方、ご興味を持った方がいらっしゃれば、是非お気軽にお問合せ頂ければと思います。
モリチュウでは、お客様のニーズに合わせて、素材や製造方法のご提案をしています。
調達面での課題、開発面での課題について、お話を聞きながら解決策のご提案をいたします。進めてしまってから後に戻るリスクを避けるためにも、今モヤモヤしていることがあれば、是非以下URLよりお問い合わせください。何か新しいヒントが見つかるかもしれません。
これからも、こちらのコラムでは、素材や製造方法、そしてお客様のお役に立つ取り組みなどをご紹介していきます。
株式会社モリチュウ
代表取締役 森 雄児