ロストワックス鋳造は何個から製作できるのですか?というご質問から見えてきたこと
「ロストワックス鋳造は何個ぐらいから作れるんですか?」。これは本当にお客様からよく聞かれる質問の1つです。開発担当の方も、購買担当の方もやはり生産ロットは気になるところです。そしてこの質問の背景には「1度に何個つくるとコストメリットがあるか」という内容が含まれていると推察しています。
※「ステンレス鋳物のプロ」は創業80年の経験から、鋳物技術、ステンレス等素材の特性、そして厨房機器・食品機械メーカー様の業界特徴やニーズを熟知した上であらゆる対策を講じることが可能な「ものづくり設計サポーター」です。
さて、まずはその答えですが、結論から言うと「1個」です。そう1個からの制作が可能です。
実は美術品や、ジュエリーなどにもロストワックス鋳造品が使われています。これらには一品物もあります。ただ、工業製品の場合、1個だけ作るということはコスト面から考えてもほとんど無いと思います(試作品の場合は別ですが・・・)。
それでは何個位が合理的かというと、「基本的にはワンロット100個以上が望ましいです」とお答えしています。その理由は、型のセッティングの段取り時間等を考えたときに、100個以上の方がメリットが出やすいからです。勿論200個、300個と多い方がよりメリットが出ます。ただ500個以上になるとそれ程コスト的に影響しなくなります。また、鋳造には型が必要になりますので、1個あたりの型費の負担を考えても、100個はあった方が良いのでは・・・ということになります。
しかしコストを生産ロットという視点のみで考えてしまうと判断を誤ることがあります。ロットもそうですが、それ以上に年間数量が大事になります。そして他にもロストワックス鋳造を始めとして鋳造品をより効果的に活用する際の大事な視点があります。それは・・・LTV(ライフタイムバリュー)的視点です。そして更に大切なことがあります。
既に書いた通り、生産ロットは段取り時間に影響しますので、100個以上作った方が合理的です。
次の大事な視点は年間数量です。こちらを基に合理的なロット数を決める必要がありますが、多少在庫を多めに持ったとしてもその方がコストメリットが出る場合があります。
そしてもう一つ大事な視点はLTV(ライフタイムバリュー)、つまり将来にわたって何個ぐらい制作するかと言うことです。例えば型代200,000円のものを10年間で1000個生産するとします。そうすると1個当たりの型代負担は200円となります(200,000÷1000=200)。通常型代は、150,000円から500,000円程度になりますので、1個あたり150円から500円になります。ちなみにろう型を作る金型(アルミでできています)は少なくとも10年は製作可能で、ものによってはほぼ永遠に使えます。したがってて長期にわたり同じ部品を数多く使い続ける程メリットが出るということになります。
そうなると更に大事なことは。「部品の共通化」です。新製品や、違うシリーズの製品であっても、可能な限り同じ部品を使うことで、型代の負担を下げることが可能になりますし、それ以上に生産数=生産ロットを増やすことができます。そしてそれが調達コストを有利にします。
となると、部品の情報、特に「図面情報」がしっかりと社内で共有されていることがとても重要になります。当然ですが一人の人が全ての製品を設計しているわけではありません。多くの設計担当の方が様々な製品の開発設計しています。しかし全員が自社で持っている部品の情報を共有しているかというと、そうでも無い場合が多いです。なので、社内での図面共有、そして更にそれがサプライヤーと共有されていたら、非常に話が早くなります。
モリチュウでは、一般的に公開はしていませんが、無償でお客様と図面を共有する仕組みを既に持っています。ただ、Googl Work Space がベースとなるため、セキュリティについてはGoogleのポリシーに準ずることになります。また、社内からGoogleにアクセスできないと活用出来ません。その点さえご納得いただければすぐに簡単にスタート出来ます。
「ロストワックス鋳造は何個から製作できるのですか?」という質問に対する答えから話が大分飛躍をしましたが、部品の共通化→図面の共有という大事な視点が見えてきました。Googleを使った図面共有の仕組みにご興味があれば、是非お声がけください。
モリチュウでは、お客様のニーズに合わせて、素材や製造方法のご提案をしています。
調達面での課題、開発面での課題について、お話を聞きながら解決策のご提案をいたします。進めてしまってから後に戻るリスクを避けるためにも、今モヤモヤしていることがあれば、是非以下URLよりお問い合わせください。何か新しいヒントが見つかるかもしれません。
これからも、こちらのコラムでは、素材や製造方法、そしてお客様のお役に立つ取り組みなどをご紹介していきます。
株式会社モリチュウ
代表取締役 森 雄児