HACCP導入・運用が完全義務化となった今、ステンレス素材への変更を改めて検討する良い機会ではないでしょう

錆び・剥離の廃除

「これでやっと落ち着きました…」。
お客様からのホッとしたお声をお聞きし、安心した記憶がまだはっきりと残っています。

厨房機器業界、食品機械業界の皆さんにはすでに承知の通り、HACCP(ハサップ)が2021年6月から、HACCP導入・運用が完全義務化となりました。

HACCPは、「Hazard(危害)」「Analysis(分析)」「Critical(重要)」「Control(管理)」「Point(点)」の5つの単語の頭文字ですが、それは大きく分けて、前2つの頭文字(HA)に関連する「危害分析」、後の3つの頭文字(CCP)に関連する「重要管理点」に大きく分かれます。
その中で、消費者に安全な食品を提供する機器製造に関わる立場として特に気を付けなくてはいけないのが、「危害分析」、特に異物混入をいかに避けていくかということになります。

東京都福祉保健局の「食品の苦情統計」によると、令和元年で苦情件数が総数4849件あり、その内「異物混入」が660件(13.6%)を占めています。
苦情対象施設を見ると、「飲食店営業」、「食品製造業」、「販売業」(デパート、スーパー等)となっています(学校給食関連ははっきりと区分されていませんでした)。

一方、 平成20年5月15日発行の「愛産研食品工業技術センターニュース」には、「国民生活センターの苦情相談件数では、異物の種類は虫が最も多く(24.5%)、金属片・ボル ト・ナット・缶のクズなど金属類(7.3%)、毛 (6.6%)、針・針金・釣り針・クギ(6.5%)、 プラスチック・ゴム(5.3 %)、ガラス片 (3.9%)の順となっています」という記事がありました。

※「ステンレス鋳物のプロ」は創業79年の経験から、鋳物技術、ステンレス等素材の特性、そして厨房機器・食品機械メーカー様の業界特徴やニーズを熟知した上であらゆる対策を講じることが可能な「ものづくり設計サポーター」です。

いずれにしても、異物混入の中で金属片、ボルトなどの金属類はある一定、かつ高い比率を占めていることは間違いありません。そして、仮に口の中に入ってしまうと歯が折れてしまったり、体内に取り込まれると重大な疾患となってしまう可能性もあります。

そして、ここで気を付けなくてはいけないことは、金属部品そのものだけではなく、そこに施されている表面処理についてです。
通常鉄には防錆対策として様々な表面処理、つまりメッキや塗装が施されていますが、それらは永久ではありません。
いずれ剥離をしていきます。特に湿気の多い現場では一度剥離が始まるとあっという間に進行します。そしてそれが食品に入ってしまう恐れがあります。
また、防錆機能が低下した鉄部品の場合、錆そのものが異物混入になる可能性も否定できません。

実は、冒頭のお声は、メッキの剥離が市場クレームとなり、大変な思いをされたお客様のお声です。そしてそれを引き起こしてしまったのはまぎれもなく私たちでした。
鉄鋳物にクロムメッキを施していた製品がメッキ剥離を起こしてしまい、大変なご迷惑をおかけしてしまったのです。
勿論メッキ工程そのものに原因があったのですが、同時にメッキや塗装は永遠ではなくいずれ劣化をしていきますし、また製作工程のちょっとした環境変化で不具合が発生する可能性があります。
このような可能性があるにもかかわらず、事前に危険予知をお伝え出来なかったことが本当に悔やまれる・・・そんな経験でした。

では、異物混入、特に表面処理を避けるための解決策は何でしょうか。それは「錆びずらい材質に変える」ことしかありません。
つまり、ステンレス素材に変えることです。他にチタンなどがありますが、まだコスト的に市場に普及するまでには至っていませんので、ステンレスが現実的な選択になります。

モリチュウは鋳物を中心とした金属部品を作り続けています。
鋳造とは金属を溶かして型の中に流し込む成形方法ですが、ステンレス素材を「鋳造」出来ることをまだご存じない方もいらっしゃいます。
ステンレスというと、板金や切削のイメージが強いですが、実は「鋳造」も出来るのです。
特にロストワックス鋳造は、精密鋳造と言われ、通常の砂型鋳造に比べ、肌も綺麗です。
上記の例はもともと「鉄鋳物」で出来ていたので板金や切削では代替できない形状でした。そこでステンレスロストワックス鋳造で対応をすることとなりました。
ステンレスは素材としては高価なものとなりますが、そこは「ものづくり設計サポーター」としてトータルコストを維持するご提案をいたしました。

これから異物混入に対するマーケットの視線は厳しくなる一方です。そして、いつ何時異物混入が起こるかもしれないと不安に思う日々は大きなストレスとなります。
そして、パーツ変更には様々な部門がかかわる為、時間がかかります。そのため早くスタートするに越したことはありません。
HACCP導入・運用が完全義務化となった今、塗装やメッキをしている部品を使っているとしたら、ステンレス素材への変更を改めて検討する良い機会ではないでしょうか。

追伸:
モリチュウでは、お客様のニーズに合わせて、素材や製造方法のご提案をしています。
調達面での課題、開発面での課題について、しっかりお話を聞きながら解決策のご提案をいたします。
進めてしまってから後に戻るリスクを避けるためにも、今モヤモヤしていることがあれば、是非以下URLよりお問い合わせください。
何か新しいヒントが見つかるかもしれません。
これからも、こちらのコラムでは、素材や製造方法、そしてお客様のお役に立つ取り組みなどをご紹介していきます。

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